たなか かつゆき
田中 克幸 弁護士
東京靖和綜合法律事務所
所在地:東京都 中央区銀座7-10-6 アスク銀座ビル6階
相談者から高評価の新着法律相談一覧
解雇
解雇訴訟における地位確認について
実は、前職の会社におきまして、解雇通知を言い渡されました。その解雇理由に納得がいかなかったので、地位確認訴訟を起こしました。でも、判決までには何ヶ月もかかると言われています。そこで、やむなく転職活動をしたところ、正社員で雇用してもいいという会社を見つけることができました。ただし、給与は前職よりも低い水準でした。そこで、訴訟の結果、地位確認できるという前提で質問したいと思います。この状況下での裁判の進み方について、以下の3つの意見を聞きました。どの意見が本当でしょうか。【意見1】地位確認訴訟中に他の会社に正社員で雇用されると、地位確認ができなくなるので、和解に切り替わる。【意見2】地位確認訴訟中に他の会社に正社員で雇用されても、判決まで訴訟を続けることができる。しかし、地位確認ができたとしても、他の会社に正社員として雇用されるまでの賃金しか取ることができない。【意見3】地位確認訴訟中に他の会社に正社員で雇用されても、判決まで訴訟を続けることができる。そして、地位確認された後も、賃金の差額を前職の会社に請求することができる。以上、よろしくお願いします。
回答
ベストアンサー
結論から申しますと、3つの意見とも間違っています。ご質問は、「解雇期間中の賃金と中間収入」と呼ばれる論点に関するもので、これは、労働者が解雇されてから解雇無効・地位確認判決により地位が確認されるまでの期間に他の事業所で働いて収入を得ていた場合における取扱いについて述べるものです。以下に説明します。まず、地位確認の訴訟は引き続きできますので、意見1は間違っています。新たな勤務先を見つけたことによって、会社側が和解を提案したり、裁判所が和解を勧めたりすることがあると思いますが、貴殿がその和解提案を受け入れなければ、判決が出されることになります。次に、前職の会社から受け取ることができるお金ですが、地位確認がされた場合、①他の会社で働かなかった期間についてはその期間に対応する前職の会社での賃金全額(100%)を受け取ることができ、②他の会社で働いていた期間については、他の会社の賃金とその期間に対応する前職の会社での賃金との差額を受け取ることができますが、その差額がその期間に対応する前職の会社での賃金の60%に満たない場合には、この賃金60%相当額をもらうことができます。ここでいう、「その期間に対応する前職の会社での賃金」とは、貴殿が解雇されないでそのまま、その時期に前職の会社にいたら確実にもらえたであろう賃金(基本給や諸手当、一時金は該当しますが、通勤手当や残業代は該当しません)という意味です。別の言い方をすると、貴殿は、最低でも前職の会社での賃金の60%相当額をもらうことができ、賃金の差額がそれ以上の場合には差額をもらうことができる、ということです。このような処理は最高裁の判例に基づくもので、同判例は「使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職について利益を得たときは、使用者は、右労働者に解雇期間中に賃金を支払うにあたり右利益の額を賃金額から控除することができるが、右賃金額のうち・・・平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されている」としています。この判例の考え方は、民法536条2項と休業手当に関する労働基準法26条との調整を図ったものと言われています。法的な理論構成は、難しいのですが、取扱いは、上記のようになります。
組織・機関
共同経営者間での請求
知人4人と共同経営で事業をしていました。法人ではなく個人事業主の開業届けを出し、すべての名義になっている人間が1名。実質の代表であり、自分でも代表を名乗っています。その他3人は何の届けも出しておらず、従業員としての登録もありません。共同で経営するという契約書は交わし、発言権などは平等ですがオーナー以外誰もどこにも何も登録はしていません。開業してからあまり売り上げが伸びず、利益配当は0円でした。生活苦の為私は辞めることにしたのですが、私が辞めたあとから残りの3人で利益配分がはじまったようです。私は自分が働いていた分を代表に請求することはできるのでしょうか?請求したいのはHP制作やパンフレット制作など[自分が作った(物質的な)もの]に対してです。可能であれば採用されているアイディア、私にしかなかった知識などに関しても請求したいと思っています。共同経営の場合は請求できないのでしょうか?また、HPやパンフレットに使用しているフォントや画像など一部私のオリジナルが含まれています。請求できないのであればこのオリジナルの使用を辞めてもらうことは可能でしょうか?
回答
ベストアンサー
ご質問の件は、事実関係に結論が影響され、断定的な回答が難しいのですが、次のような考え方もできると思います。事実経過は、①売上げが伸びず利益配分はゼロ、②貴殿は辞めた、③その後に残りの3人に利益配分が始まった、というものですが、交わした「共同で経営するという契約書」は、民法上の組合の一種と思われます。この契約書との関係で、②の貴殿が辞めたときのやりとりが、結論に大きな影響を持ってくると思います。まず、②貴殿が辞めた際、契約関係はどのように処理されたかで異なってきます。契約関係から抜けるという処理をされたのか、それとも単に労務の提供をやめただけなのかによって、結論が異なってきます。契約関係から抜けるという処理をされた場合には、(その際に権利関係の清算も済ませたとみられがちですので)それ以降は配分を請求する権利がなくなると思われます。これに対して、労務の提供をやめただけで契約関係からは抜けていないという場合には、契約関係は続いており、契約書に従い利益配分を請求できます。次に②の辞めた理由が、他の経営者からの誤った情報(例えば、本当は儲かっているのに儲かっていないとの情報を与えられた等)によって辞めてしまったような場合には、辞めたことの詐欺取消あるいは錯誤無効を主張することで、現在もまだ貴殿が契約関係にあると主張し、利益配分を請求することが考えられます。騙された場合は、不法行為による損害賠償請求も考えられます。他方、従業員としての給与の請求は、基本的に難しいと考えます。他の共同経営者が給与をもらっていれば、貴殿も給与として請求できるかもしれませんが、そうでなければ、契約は共同経営であり、雇い主と従業員の関係ではなく、また労務の提供も組合契約における出資として認められますので、労務提供の対価は利益配分請求であり、給与としての請求はできないと考えます。また、請求されたいのは、アイディアや知識に関するものですが、これらの提供も共同経営契約における出資と考えられますので、対価の請求は契約関係の継続の有無に関わってきます。最後に、フォントや画像については、貴殿が著作権を主張し相手方に利用停止を求めることが考えられますが、相手方からは、それらも共同経営契約に従って貴殿が出資したものである、との主張が予想されます。どちらが認められるかは一概には言えません。
特許権
特許権の譲渡後のリスクについて
弊社Aが所有する特許権Pを他社Bに譲渡することを検討しています。この譲渡によって他社Bが特許権Pの権利者になり、その後、他社Bが特許権Pの発明を用いた商品Gを販売し、以下の事態が生じた場合、弊社Aがなんらか責任(民事や刑事)を負う可能性はあるのでしょうか。また、弊社Aと他社Bで締結した契約の条項として「弊社Aがこのような責任を負わない」ことを記載した場合、弊社Aは確実に責任を回避することができるのでしょうか。<ケース>他社Bが商品Gを販売する行為が、第三者Cの別の特許権Qを侵害することとなった。弊社Aは特許権Qが存在を知らなかった(費用が掛かるため調査していなかった)。他社Bおよび第三者Cは、「弊社Aが特許権Qの存在を調査せずに特許権Pを譲渡したのだから、他社Bの特許権侵害の責任は弊社Aにもある。過失の推定(特許法103条?)を類推適用できる。」と主張した。ご教示よろしくお願いいたします。
回答
ベストアンサー
特許権を譲渡した程度では、他の特許権の侵害の幇助にはなりません。
特許権
破産した会社の特許権購入
最近、弊社の同業である会社が倒産したことを聞きました。その会社が保有していた或る特許権を購入したいと考えています。この場合、破産管財人さんに連絡して譲渡をお願いするのがよいのでしょうか。通常、このようなお願いを受け入れてもらえるのでしょうか。どのようにすれば快く応じてくれるでしょうか。また、この場合の売買契約は弊社と破産管財人さんとが当事者となって締結されるのでしょうか。よろしくお願いします。
回答
ベストアンサー
まずは、できるだけ早く破産管財人に購入意欲を伝えられることをお勧めします。破産会社の財産の処分権は管財人が有していますので、破産管財人に連絡して購入意欲を伝えてください。特許権のような知的財産権だけの処分は、通常、管財人としても処分ルートがないので、購入希望に対しては前向きに話を聞いてくれる筈です。売買契約は、貴社と破産管財人が当事者となって締結することになります。なお、破産会社としては、在庫が残っている可能性がありますので、破産管財人側からは、特許権だけではなく、在庫も合わせて買ってくれないか、というような話が出るかもしれません。ただ、在庫は在庫処理業者を通常見つけられますので、一緒に購入することが絶対の条件ということは通常ありません。あとは、購入希望の業者がどの程度存在するか、その条件は? という観点から、貴社が購入できるかどうかが決まると思います。
企業法務
公開買い付けの5%ルールについて
ある上場会社の株式をすでに5%以上保有している会社に勤務しています。今後当社がこの会社の株式を市場外で買い増しする場合も公開買い付け規制に引っかかることがあるのでしょうか。(3分の1を超えることまでは考えていません)よろしくお願いします。
回答
市場外で上場会社株式を買うこと(買付け)により買付け後の株券等所有割合が5%超の場合には、その買付けは公開買付けによる必要があります。但し、買付け後の株券等所有割合が5%超であっても、著しく少数の者からの買付けで買付け後の株券等所有割合が3分の1以下であれば、公開買付けは不要です。具体的には、買付けを行う相手方の人数と、当該買付けを行う前60日間に市場外において行った当該上場会社株式の買付けの相手方の人数との合計が10名以下である場合、つまり、61日間に10名以下の者から取得する場合で、買付け後の株券等所有割合が3分の1以下の場合には、公開買付けによる必要はありません。この10名の算定は延べ人数によるべきと解されています。貴社は既に5%以上を保有しているので、今後の市場外での買増しは、この規制の対象となります。次に留意すべきは、株券等所有割合の算定において、①対象は、当該株式のほか、その株式に関する新株予約権等、当該株式を取得できる有価証券も含まれますし、②貴社の所有数のほか、貴社の特別関係者が所有する株式等の数も合算対象です。特別関係者は、実質的特別関係者と形式的特別関係者があり、実質的特別関係者とは、貴社との間で、①共同して株式等を取得し、又は譲渡すること、②共同して当該上場会社の株主としての議決権その他の権利を行使すること、③株式等の買付けの後に相互に当該株式等を譲渡し、又は譲り受けることのうちいずれかを合意している者です。形式的特別関係者とは、①貴社の役員、②貴社が他の法人等に対して「特別資本関係」を有する場合(但し、当該株式等の買付けによって特別資本関係を有することになる場合を除く)における当該他の法人等及びその役員、③貴社に対して「特別資本関係」を有する個人及び法人等並びに当該法人等の役員です。「特別資本関係」としては、例えば、法人等が他の法人等の総株主等の議決権の20%以上の株式を所有する関係があります。即ち、貴社が上場会社株式を20%以上所有することになった時点以降、その後の買付けにおいては、その上場会社の役員の所有する株式等も合算する必要があります。「特別資本関係」の範囲は、上記のほかにも重要なものがあります。字数制限で、本回答では全てを説明できませんが、公開買付け規制違反は、課徴金や罰則の対象であり、具体的かつ漏れのない検討が必要です。
企業法務
株式の価値。会社の登記関係の資料も必要になりますか?
共同経営からおりるにあたり、持っている株式をMに買い取ってもらうというようなことになりますが、この場合、株式の価値を評価するためには、決算書のほかに、どのような資料が必要でしょうか?会社の登記関係の資料も必要になりますか? 会社をはじめるにあたり契約はいっさい交わしていません。弁護士さんに相談し、解決までおねがいすると、どのぐらい費用がかかりますか?
回答
まず株式価値の評価方法を説明します。取引相場のない株式の場合、①純資産価額方式、②類似業種比準価額方式、③配当還元価額方式、④DCF法のうちのいずれかの方法、又はこれら方法で算定した価格の平均等による方法が多く見受けられます。①は純資産を指標とする方法で、通常、帳簿上の純資産ではなく、時価純資産であり、資産負債を時価評価する必要があります。②は上場会社の中から貴社と業種・規模・特性等が類似している会社を選び、その会社の株価を基にして、配当、利益、純資産を比較して貴社株式の評価額を決める方法、③は毎年の配当額を基準にして株式の評価額を決める方法、④は将来得られる会社のキャッシュフローを予測し、そのキャッシュフローを(金利等を考慮して)現在価値に直して収益力を求め、株式価値を評価する方法です。評価の資料は、通常、過去3~5期分の決算書だけでなく、過去3期分の税務申告書のほか、資産・負債が分る資料、将来の予想収益やキャシュフローが分る資料(例えば事業計画書)が必要です。資産・負債に関する資料としては、会計帳簿が該当し、例えば、売掛金補助元帳、在庫種類別残高明細、不動産の明細、固定資産台帳、リース資産一覧、仕入に関する資料、借入金明細があります。どの程度の資料・精度で評価を行うかは、貴社の会社規模や所有資産によります。また、株式評価をきちんとやろうとすれば、税理士あるいは公認会計士に依頼することになり、作業程度はその報酬額とも関係します。登記簿謄本は一応用意します。次にMとの関係ですが、契約を交わされていないので、貴殿がMに株式買取を請求できる権利はありません。Mが買取りを拒絶した場合、法的に買取をさせる方法はなく、あくまでも交渉で納得してもらうしかありません。本件を相談から解決まで(株式評価は除きます)弁護士が受ける場合、買取希望額を基に着手金を決め、解決した場合の成功報酬を買取価格を基に決める方法によると思います。着手金は、買取希望価格が300万円以下の場合はその8%、成功報酬は買取価格が300万円以下の場合はその16%が一般的だと思います。金額が300万円超となる場合は、報酬比率は段階的に低くなります。この着手金・成功報酬以外の方法としては、処理に要した時間に時間当たり単価(1時間あたり1~3万円程度)を乗じた金額という方法もあります。
契約書
業務受託先の変更が出来ますか
弊社はA社から受注して個人Bに業務委託として発注しています。、業務委託契約の有効期限が迫ったため、Bが契約を解除して、C社と契約してA社の仕事をしたいと言ってきました。理由としてはC社の方が高い単価を提示しているようなのですが、そのようなことが出来るのでしょうか。業務委託契約書には「乙は甲の取引先と直接、商談その他の行為をしてはならない」という項目は入っていますが、C社との場合のようなケ-スは想定していませんでした。
回答
難しい状況になられていると思います。二つの点で、Bの行為を止めさせるのは困難だと思います。第1に、契約書に、「乙は甲の取引先と直接、商談その他の行為をしてはならない」という条項が入っているとのことですが、有効期限が迫っているとのことです。契約の有効期限が満了すれば、この条項の効力がなくなりますから、Bを拘束することはできません。第2に、契約の有効期間中であっても、Bが禁止されているのは、「甲の取引先との商談その他行為」であって、それも「直接」との文言が入っています。C社との商談その他行為は、甲の取引先とのものではなく、甲の取引先に関連する話ではあるが、直接行っているものではないと考えられるのが一般だと思います。そのため、Bの行為がご指摘の契約条項に違反しているとの主張が認められるのは難しいと思います。別の方法はないのでしょうか。契約書に機密保持義務に関する条項が入っているとすれば、以下の点を捉えて、その違反を問うこともできる場合があると思います。ご説明されている状況は、「Bが契約を解除して、C社と契約してA社の仕事をしたいと言ってきました。理由としてはC社の方が単価が高い単価を提示しているよう」とのことですが、このことは、「貴社がA社と仕事をしており、それをBに発注しているということ、その契約条件」を、BがC社に漏らしていると思われるからです。
特許権
特許権の譲渡後のリスクについて
弊社Aが所有する特許権Pを他社Bに譲渡することを検討しています。この譲渡によって他社Bが特許権Pの権利者になり、その後、他社Bが特許権Pの発明を用いた商品Gを販売し、以下の事態が生じた場合、弊社Aがなんらか責任(民事や刑事)を負う可能性はあるのでしょうか。また、弊社Aと他社Bで締結した契約の条項として「弊社Aがこのような責任を負わない」ことを記載した場合、弊社Aは確実に責任を回避することができるのでしょうか。<ケース>他社Bが商品Gを販売する行為が、第三者Cの別の特許権Qを侵害することとなった。弊社Aは特許権Qが存在を知らなかった(費用が掛かるため調査していなかった)。他社Bおよび第三者Cは、「弊社Aが特許権Qの存在を調査せずに特許権Pを譲渡したのだから、他社Bの特許権侵害の責任は弊社Aにもある。過失の推定(特許法103条?)を類推適用できる。」と主張した。ご教示よろしくお願いいたします。
回答
ご質問の事例ですと、第三者Cの特許権Qを侵害するのは、他社Bが販売する商品Gということです。商品Gという特許権Qの侵害品を販売する第三者Cの行為が、特許侵害となります。貴社Aが譲渡するのはかくまでも特許権Pであり、侵害品の一部を構成する発明のようですが、侵害品自体あるいはその一部部品を譲渡したり製造したりするわけではありませんので、単に、特許権Pを譲渡しただけの場合には、特許の実施(特許法2条3項)や侵害とみなす行為(特許法101条)に該当せず、貴社が第三者Cに対して責任を負うことはありませんし、他社Bとの関係でも、特許譲渡契約書に例えば、「特許権Pは第三者の特許権を侵害しないことを保証する」といった趣旨の規定を設けない限り、貴社Aに商品Gが特許権Qを侵害したことの責任を負わせることはできません。また、特許譲渡契約書に、貴社Aが責任を負わない旨を明記しておけば、一層貴社が責任を負わないことが明確となります。なお、特許権Pと特許権Qの関係で、Qの方がPよりも先に特許出願されているとすれば、今後、Qの存在を理由にPについての特許無効審判(特許法123条)がおきる可能性があるのかも知れません。そのため、特許譲渡契約書には、貴社が特許権Pの有効性を保証するものではない旨の規定を入れておかれた方が良いかも知れません。
契約書
契約書における契約当事者以外の登場について
ネット企業にて法務を担当している者です。契約書についてなのですが、契約書の中では契約当事者以外の者(法人)は表示すべきではないのででしょうか。その契約当事者以外の者というのが「あるサービスの提供主体」として表示されるだけで、その者はほかに現れることはなく、この表示部分でも特段拘束力が及ぶ、という内容のものでもございません。このような場合であっても契約書上はその契約当事者以外の者を登場させるべきではない、ということになりますでしょうか。お忙しいところ誠に恐れ入りますがご教授よろしくお願いいたします。
回答
「契約書に契約当事者以外の者(法人)を表示させるべきではない」、ということはありません。表示される例はあります。例えば、合弁契約や株主間契約の場合には、出資者(株主)だけが契約当事者(例えば、甲と乙)であっても、「甲(主として過半数株主)は出資先の会社(丙)にある行為をさせるものとする」といった内容を規定することがあります。この場合でも、契約の効力は契約当事者である甲と乙だけに及び、契約当事者でない丙には及びません。但し、甲が丙にさせると規定された行為を、仮に丙が行わなかった場合には、甲の契約違反となります。従って、ご質問の場合のように、契約当事者ではない「あるサービスの提供主体」を契約書に表示することは特段問題がありませんし、ご質問の場合では、「あるサービスの提供主体」として表示されるだけとのことですので、この提供主体の行為について契約当事者が何がしかの義務を負うということもないということになります。
就職・転職
競合他社への転職
当社役員が退任後、競合他社に転職し社員並びに協力会社(職人)数名を引き抜き、かつ大口顧客に対して、当社がその事業から撤退するかのごとき風評を発している状況です。また、主として同氏が担当役員であった仕入先(建築部材-当社が主力消費)に対し、競合他社に直接販売するように誘導(退任前は当社経由にて販売していました-月間売上200万円内外の損失が発生)するなど、当社の営業を侵害する行為と考えています。このケースで、同氏に対し営業妨害を阻止すること、あるいは損害賠償請求などの法的な処置は講じられるものでしょうか。御教示のほどお願い致します。
回答
各行為ごとに説明します。1.貴社がその事業から撤退するかのごとき風評を発していることに対しては、不正競争防止法による対応が考えられます。「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」は「不正競争」に該当します(同法2条1項14号)。従って、貴社は、競業他社に対して、風評を発することを止めるように請求し(同法3条)、風評によって被った損害の賠償を請求できます(同法4条)。また、元役員に対しては、不法行為に基づく損害賠償を請求できます。2.社員の引き抜き行為に対しては、通常の勧誘行為に留まっていた限りは適法で、貴社は引き抜きによる打撃を甘受せざるを得ません。ただ、競業他社と元役員が共謀の上内密に計画を進め、貴社における社員を一斉大量に引き抜くなど、引き抜き行為の内容と態様が悪質である場合には、元役員は委任契約上の債務不履行責任や不法行為責任を負いますし、競業他社は不法行為責任を負います。責任を負う場合、貴社は損害賠償請求ができます。3.担当取引先への営業活動については、取引先に関する情報が、不正競争防止法で保護される「営業秘密」(同法2条6項)に該当する場合は、同法による差止請求や損害賠償請求ができます。営業秘密に該当するためには、①秘密として管理されていること、②事業に有用な技術上又は営業上の情報であること、③公然と知られていないこと、という3つの条件を全て充たす必要があります。元役員の利用している情報がこれら3つの条件を全て充たす場合は、営業秘密に該当します。ただ、単に取引先であるとの情報については、営業秘密に該当することは難しいのが一般的です。4.今回の回答は、貴社の指摘される事実を前提としますが、事実の有無は証拠により判断されますので、証拠の有無も合わせて検討していただく必要があります。また、今回の回答は、元役員と貴社との間に退職後の行為について合意がないことを前提としていますが、貴社の役員服務規定等、役員が従うべき規則や元役員が貴社に提出した書面に、退職後の義務について規定がある場合には、当該義務違反を理由とした措置を取れることを念のため付言します。以上
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