この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
結婚して,2年ほどですが,毎日のように性的に卑猥な言葉を朝から言ってきます。また,毎日のように浮気を疑われて,しつこく追及してきます。また,夫がものを処分することを嫌がり,家がごみ屋敷寸前ですが,私(妻)のせいにされています。普段は優しく,紳士的で,経済的にも恵まれているため,何とか我慢しようと頑張ってきましたが,毎日のように卑猥なことを言われ,浮気を疑われて,頭がおかしくなりそうです。外面がいいため,外部からの評判がよく,周りの人に相談しても,まともに取り合ってもらえません。離婚したいと言いましたが,同意してくれません。DVがあれば離婚できるはずです。また,言葉の暴力もDVになると聞いたことがあります。言葉の問題はDVではなく,モラハラなのでしょうか。モラハラでは,離婚できないのでしょうか。モラハラでも離婚できるなら,モラハラでもいいです。何とか,離婚したいです。
解決への流れ
別居を開始し,弁護士さんが窓口になってくれたので,平穏に暮らすことができました。別居をするにあたっては,役所の担当者さんが親身になってくれたので,別居ができたと思います。調停を申立てましたが,調停が開始される前に,協議離婚になりましたので,調停は取り下げました。離婚が成立してよかったです。
DV(ドメスティックバイオレンス)には,法的に明確な定義はありませんが,相手の人格を否定するような言葉をいうことも,DVにあたります。内閣府では,精神的なDVを以下のように説明しています(法的な定義ではありません)。心無い言動等により、相手の心を傷つけるもの。精神的な暴力については、その結果、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に至るなど、刑法上の傷害とみなされるほどの精神障害に至れば、刑法上の傷害罪として処罰されることもあります。(具体例)・大声でどなる・「誰のおかげで生活できるんだ」「かいしょうなし」などと言う・実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする・何を言っても無視して口をきかない・人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする・大切にしているものをこわしたり、捨てたりする・生活費を渡さない・外で働くなと言ったり、仕事を辞めさせたりする・子どもに危害を加えるといっておどす・なぐるそぶりや、物をなげつけるふりをして、おどかす上記のようなものがDVにあたるような言動で,それよりも程度が低いものがモラハラというイメージです。これらは,1回の言動で,直ちに,DV→離婚ということにはなるわけではありません。言い方や会話の流れ,声の大きさなども影響しますし,これらが繰り返され,重なり合うことによって,また,受けたダメージ等のその他一切の事情を考慮して,DVかどうかということが検討されます。もし,離婚裁判ということになれば,DVかどうかというこ問題は,直接は審理されません。あくまでも,婚姻を継続しがたい重大な事由(民法770条1項5号の要件)があるかないかが審理されます。実は,DVかどうかは,あくまでも,副次的な問題で,色々な事情を考慮して決められるということですから,DV有=離婚ということではありません。特に精神的DVの場合は,ひどいと感じられる言葉がたくさん出てきても,婚姻を継続しがたい重大な事由はないと判断されることもあります。ですから,ひどい発言がDVかどうかという問題は,実はそれほど重要ではありません(慰謝料算定や不法行為の請求においては重要です)。誰がどう考えても,発言がひどすぎる,発言がしつこすぎるというようなときに,発言だけでも離婚になりうる場合があると考えるとよいでしょう。具体的なケースで離婚が認められそうかどうかは,まさに事案によるので,弁護士にご相談ください。本件については,裁判をしても勝つ見込みが低い,いわゆるモラハラでした。モラハラでも離婚ができるケースはありますが,本件では,モラハラの程度が,他の裁判例と比較しても,それほどひどくなかったのです(もちろん,ご相談者さんは,心痛が激しく,まさに頭がおかしくなりそうというくらいでした。)。そのため,粘り強く,説得し,協議離婚にこぎつけたという事件でした。モラハラでのお悩みのご相談は,たくさん頂いています。外部からは,家庭内のひどい状態がわかりにくく,そのことが一層,被害者側の精神的ダメージを大きくしています。モラハラでお悩みの方は,是非一度,お問い合わせください。